そよぎフラクタルのコンセプト
私の経験値すべてを活かし、人生をかけて展開していく多次元キャラクタープロジェクト——
それが【そよぎフラクタル】です。
軸となるキャラクター『梵そよぎ』を中心に、梶裕貴と縁のあるクリエイターとのコラボレーションによる動画制作や楽曲制作を行い、ものづくりの輪を広げていくことが本プロジェクトの目的です。
コロナ禍を経て、"声優である自分にだからこそできる表現とは何だろう?"と考えたこと、自分の年齢とキャリアを思った時に"何かを残したい"と強く感じたこと——
さらには、"自分を育ててくれた声優業界やアニメ業界への恩返しがしたい"といった想いも、この企画の原点と言えるでしょう。
ほかにも"プロアマ問わず、面白いものを作りたいと思った人が、しがらみなく、気の合う仲間と好きなものを作れる場所づくりをしたい"という強い願いも。誰もが楽しみながら新しい作品を生み出し、世界に通用するカルチャーを作れる場所として、その具現化を目指しています。それに伴い、『梵そよぎ』を題材とした音楽やイラストのコンテストを定期的に企画することで、まだ見ぬ新しいクリエイターたちにとってのチャンスとなるような機会を作っていけたらとも考えています。
【そよぎフラクタル】と皆さんのアイデアが合わさった時、その可能性は無限大となります。
※敬称略
もちろん、著名クリエイターの皆様とのご縁だけではありません。
このプロジェクトに興味を持っていただけた"あなた"とも、一緒にものづくりをしていけたらと考えています。
幾何学模様(=フラクタル)の図形のように"同じ理想を持ったクリエイターが集まって作品を生み出していった結果、俯瞰で見てみると、これまでにない全く新しい形を織りなしているはず"という、創作ユニットとしての理想形を願い、生まれた言葉です。
フラクタルとは「自己相似性」のこと。意訳すると"個はすべて"を構成する存在であり、"すべては個"から生まれている"と捉えることができます。つまりは「拡大と収縮」の運動エネルギーと言い換えることができるのではないかと私は考えます。
『梵そよぎ』から『クリエイター』へ。
『クリエイター』から『社会』へ。
そして『社会』から、また『梵そよぎ』へ。
創造的刺激は循環し、より新しく魅力的で、誰も見たことのない表現へと形を変えていくと私は確信しています。個人では、決して作り出すことのできないであろう波紋。幾何学図形。それを生み出せる集合体こそが【そよぎフラクタル】であり、これからのデジタル社会において、必要不可欠なコミュニティであると私は考えています。
また、私の声の特徴である「1/fゆらぎ」も音の波形的にフラクタルに属する、という説も由来のひとつです。
(※ 「1/fゆらぎ」とは…焚火やろうそくの炎、小川のせせらぎ、木々のそよぐ音など、人の脳や心に癒しや安らぎを与えるといわれる周波数のこと。)
長期的には、アニメ化やゲーム化なども視野に入れ、多次元的にエンタメを盛り上げていこうと考えています。まだまだ実現まで程遠い、果てしない計画ではありますが、夢を見るのにお金はかかりません。少しだけ、私の頭の中の構想を覗いてみてください。
『梵そよぎ』の世界を皆さんと一緒に形づくり、誰もが楽しくものづくりができる総合プラットフォームを創造していくことこそ、本企画の最終目標と言えるでしょう。
2004年、YAMAHAから『VOCALOID』が発売されて以来、日本の音楽史に様々な革命が起こってきました。
「楽譜を渡せば、自分の代わりに完璧に歌いきってくれるキャラクター」の登場───。
今、日本のエンタメの多くは『音声合成ソフト』から生まれていると言っても過言ではありません。
ご存知のように『音声合成ソフト』にとって最も大事な要素は‘"声"です。であるとすれば、そんな“声"を使うことで成り立っている夢のようなツールを"声優"が使わない手はありません。声に特化し、声の技術を学んできた声優。そんな声優が、自らの声を使って『歌声合成ソフト』を作ることで、その分野の可能性はさらに大きく広がると考えます。
現在、ありがたいことに、私は声優業を生業とさせていただいておりますが、歳を重ねるごとに、また、仕事で喉を酷使をするたびに、自分の声帯の状態変化を敏感に感じます。そんな中で、もしも「歌声合成ソフト」という形で、現在の自分の声を残しておくことができたとしたら。十年後、二十年後、どうなるのだろうか?はたまた、自分が死んだはるか未来の時代では?そこに、果てしないロマンを感じるのです。すでにこの世にいないはずの自分が、新たな作品づくりに参加できる日が来るかもしれない。いわば、形のない──消えることのない財産、というわけです。
目覚ましい進化を遂げる一方、様々な分野で議論を巻き起こしているAI。その発展と普及により、現在、無法地帯となってしまっているのが"声の権利"問題です。ネット上は、無断・違法なディープフェイク技術を使った音声で溢れかえっています。私自身、そういった動画を目にする機会は少なくありません。作品に携わる多くのクリエイターたちが、文字通り、血と涙を注ぎ込んで生み出したキャラクターたちが汚されている。私はそう感じました。作り手への愛とリスペクトに欠ける行為だなと。そして、何より大きな問題なのは、実は動画そのものではなく、罪の意識なくアップロードをしてしまう人、そして、それを楽しんでしまう人たちのモラル、倫理観の欠如にあるのではないかと思うのです。つまり、AIという技術自体に善悪はなく、あくまで、それを使用する人間側の意識にかかっているのだろうと、そう思うのです。
だからこそ私は、AIと敵対するのではなく、共存すべきだと考えています。そんな中、「正しいAIとの付き合い方とは何か?」という問いに対し、声優としての観点から生まれたのが、今回の音声AIプロジェクト『そよぎフラクタル』でした。ガイドラインに守られた、本人公認の高品質ソフトさえあれば、作り手はより自由に、その声を創作活動に生かすことができる。受け手はその作品を、自由に気兼ねなく楽しむことができるというわけです。
声優業をしている中で──とりわけ朗読劇などに出演した際に、声や音、その限られた表現だからこその可能性を強く感じます。視覚を必要としない世界だからこその自由。たった一言で安心させることもできるし、逆にものすごく不安にもさせてしまう。〝言霊〟という言葉があるように、声にも、それだけ大きな力が宿っていると思うんです。そして、そんな声の表現に特化した能力を持つ人のことを‘‘声優’’と呼ぶのでしょう。だからこそ、私はその無限の可能性を【そよぎフラクタル】を通して、もっと突き詰めていきたいですし、文化や言葉の壁を越えて、世界中の人たちに伝えていけたらと考えているのです。
昨今、AIとの向き合い方について、しばしば議論されていますよね。クリアしていかなければならない問題も多々あると思います。それでも私は、AIと敵対するのではなく、共存すべきだと考えています。AIという技術自体に善悪はない。あくまで、それを使用する人間側のモラルにかかっている。いま現在、無法地帯となってしまっているであろう声の権利問題、そして、生成AI業界においてのルールづくりにも、本企画を通して貢献することができたら幸いです。同時に、上記のようなデジタル技術を使った企画はもちろん、アナログな表現にも全力で取り組んでいきたいと考えています。新しいエンタメが急増しているこの時代だからこそ、朗読劇などのシンプルかつ、ストレートなコンテンツから学べることを蔑ろにしてはいけない。その両輪が揃ってこそ、誰もが魅力的に感じるエンターテインメントは生まれると、私は信じています。